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2011年 10月 06日
麻生志保展「Re」 作品紹介
続いて、2F 「麻生志保展」 作品紹介です。
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来廊くださった詩人の新井隆人(あらい・りゅうと)さんより、感想のお言葉をいただきました。
素晴らしい内容だったため、ご本人の許可を得て、こちらに掲載します。

「現在の日本を生きる日本画、そのリアリティと決意」

伝統的な素材と題材を扱いつつ、
現代的な視点と技法を用いることで、
「現在の日本」のリアリティを感じました。
また、「鯉」の持つグロテスクさとエロティックさを、
絶妙なセンスで画面に定着させていることに瞠目しました。
エサを求めて池面をばしゃばしゃと音を立てて、
激しくのたうつ鯉の群れを時おり見ることがありますが、
そんな音が、画面から聞こえんばかりの迫力を覚えました。

「エサを食べること=生きること」に対する鯉の貪欲さは、
震災後を貪欲に生きていかざるをえない日本に対する、
切実なエールのようにも思えました。
また、麻生さんの描く鑑賞用の鯉の体の色は、赤と白ですが、
日本の国旗である「日の丸」を喚起させ、
そこからも、震災後の日本に対するエールを思わせました。
新潟地震の被災地であり、養鯉業が盛んな山古志村等で取材をした、
ということも、大震災との関連を思わせますし、
非常に、面白い「読み方」ができる作品だと思いました。

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また、別の読み方をすれば、錦鯉の絵を見て田中角栄を
思い出したと言った人がいた、と麻生さんから聞きましたが、
確かに錦鯉は、趣味人の道楽として、江戸期から現在に至るまで、
「贅沢」「金持ち」「成り金」といったイメージを持たされてきました。
いわば錦鯉は、拝金主義や資本主義経済の歪みを体現している側面も
あるのです。そのように見ると、画面の最後に描かれた燃え盛る炎は、
グローバリズムと政治の混迷により疲弊が進み、没落の予感を抱える
日本の行く末を暗示しているようにも思えます。

あるいは、一種の金持ちの道楽として、
特殊な貨幣価値を与えられた鑑賞用の鯉の、
絢爛で、したたかで、それでいてどこか儚げな姿は、
特殊な貨幣価値の中にあった、
かつての吉原などの花魁との関連性を想起させ
(真紅の長襦袢のイメージも…)、
そこに現代的なゴスロリファッションやメイド喫茶等を思わせる
レース模様を織り込むことで、
現代の萌え文化における少女たちの危うい貨幣価値との
連関をも惹起し、
フェミニズム的な読み方もできると思いました。

…と、勝手に妄想のような批評をしてしまいましたが、
さまざまな切り口から読み取ることができる、間口の広さは、
麻生さんの作品が優れた作品であることの表れだと思います。

(text/ 新井隆人)

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麻生志保展「Re」

by mmfa | 2011-10-06 16:02 | 展示情報


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