2015年 05月 03日
工房集展「Fundamental Ⅱ」-作品紹介③ 後藤友康 / 野本竜士
【1F】



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「棒が一本」







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「棒が一本」








後藤友康 Tomoyasu Goto

レコード盤からCD へ、そして、段ボールの切れ端からベニヤ板(本人曰く「しかく」)へと変遷してき
た画材。初めは、一人で「棒が一本あったとさ、葉っぱかな?…」と絵描き歌を口ずさみながら、時には
職員と一緒に歌いながら、「描く」という行為がコミュニケーションツールの一つとなっていきました。
段ボールに描いていた時は、それを自分で破ったり、隣にいる仲間が次々に薄く剥いだり、ちぎったりと、
次の日も次の日も、紙の山ができていました。この山も日々大きくなっていくので、せっかくたくさん
描いてはいましたが、廃棄されていました。
そんなある日、どこからか版画用の板を見つけてきて、それに描いていたことがきっかけとなり、これが
ベニヤ板(「しかく」)のスタートとなりました。段ボールと同じペースで描くため、板も1日50 枚くらい
用意が必要でした。段ボールのようにすぐに準備できるものではなく、廃材をもらってきた事もありまし
たが、厚みや手触りに後藤さんの拘りがあるため、5mmのシナベニヤ板でなくてはいけませんでした。
自分のタイミングで受け取れない時など、周囲にその矛先が向けられてしまうこともありました。しかも、
あらかじめ好みの大きさに切ってある板があることを知ると、どんどんと要求し、みるみるうちに在庫
はなくなりました。
このため、日中活動中に本人の目の前で大きな板に線を引き、切るには時間と労力がかかることを見ても
らうことにしました。そのうち、板を切り終わるまで、待ってくれるようになりました。そして、「しかく」
を切って欲しい時は、板とのこぎりなどの道具をカゴから取り出して持ってきて、「しかく!」と伝えて
くれるようになりました。
「しかく」を描く時は、正座をして、クレパスを手にし、今までの慌ただしさは無かったかのようにやさ
しい表情で「棒が一本…」と口ずさみながら、同じ板に幾重にも描いていきます。他の仲間も後藤さんの
様子に感化されたのか、「しかく」を手に取ってちょっと擦ってみたりする仲間も出てきました。自分の
ものを他の人が触ることに初めの方こそは抵抗を示していましたが、いつからか他の仲間が触っていて
も、その様子を見守るようになっていきました。
この6 年間でたくさんの「しかく」を描いてきましたが、「しかく」にはその時々の後藤さんと周りの仲
間が表現されています。幼い頃から描き続けている絵描き歌。それは教えてもらった時の、心地よい
コミュニケーション体験の記憶なのかもしれません。

スタッフ 森田博子・竹田正冬・青谷正人










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「ツリー」








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「Untitled」




野本竜士 Ryuji Nomoto

1987 年に太陽の家への通所を始め現在27 年目。ウエスや和紙作りの仕事を経て25 年目から表現活動を
始める。初めは版画、木工、クレヨン画などを行なってみたがしっくりこなかった。試行錯誤を行なって
いく中で、ホットボンドを行なってみた。ホットボンドを溶かすために使うグル―ガンは銃の形状をして
いる。指で引き金を押すためには手指の力も必要で、本人自身に麻痺があるが、グル―ガンなら扱えるの
ではと思い試してみた。片手でも扱うことができ、本人のイメージにあった表現が行なえた様子だった。
また、いろいろな色を使っても色は混ざらず、意欲的な様子がみられた。さらに、重ねれば重ねるほど重
圧感が増し作品も徐々に大きくなってきた。
今年度に入って、ホットボンドの作品を続けてきたなかで、匠の様に技術が進化してきたと感じるエピ
ソードがあった。ある職員が線を出してみてと問うと、意識的に細い線を真っ直ぐに出していた。それか
ら、時折同じ様な声かけをすると、得意気に細い線を出している様子があった。そこで、「細い線」、「中太」、
「ドロっとした感じ」の3種類を出してもらい、どれがカッコいいか問うと、即答で「細い線」を指した。
様子を見ていると「細い線」を出すためにはいくつか条件があった。1つは、眼がさめたやる気のある
状態で行うこと。2つ目は、グル―ガンの先と作品との距離。近すぎるとドロッとしてしまい、高すぎる
と疲れやすくなり、自然な状態で良い距離感がとれることが必要だった。2点を考慮して相談して、場所
を机からマットを敷いた床に変えた。正座をして背中を丸くして作品に取り組む姿勢はまるで職人の
ような雰囲気を醸し出していた。条件の揃った環境で野本さんの持っていた力が発揮され、「細い線」を
自在に操って直線や曲線をきれいに描き、ところどころ「細い線」ではなく「極細」で凝視しないと確認
できないほどキメ細かい表現をし周囲を驚かせた。ホットボンドの本来の使用用途では考えられない線の
出来栄えに本人も自信に満ちた様子でした。また、ホットボンドの仕事を始めて、自信がついてくると、
家庭で仕事のことを中心に太陽の家であった事をよく話す様子になるなど気持ちの変化も見られるように
なってきている。
今回の作品展では進化した野本さんの作品の初お披露目となります。キメ細かい線とダイナミックな面
も持つ作品をお楽しみください。

スタッフ 大貫祥太





工房集展「Fundamental Ⅱ」
KOBO SYU Exhibition[Fundamental Ⅱ]

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by mmfa | 2015-05-03 15:00 | 展示情報 | Comments(0)


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