2015年 05月 03日
工房集展「Fundamental Ⅱ」-作品紹介⑥ 足立直久 / 納田裕加 / 前田貴
【2F】




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「Untitled」





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「アシカ」






足立直久 Naohisa Adachi

足立さんの作品の印象は一言でいえば、「ゴージャスでシック」です。とても沢山色を使うけれどもなぜ
かシックになる。足立さんは絵画、織り、粘土彫刻を活動内容にしています。そのいずれにもそのテイス
トは共通しています。
足立さんはとても積極的な人であり、前のめりな人です(笑)。ですので、日常では足立さん先に行き過
ぎだよ、とか、ちょっと待って!と言う場面もしばしば・・・でも表現活動ではそんな足立さんの本領発
揮でバンバン仕事をしてもらっています。少しでも時間があると「仕事する」と言ってきます。でも仕事
を終わるタイミングはバッチリで、「終わりにする」と言って席を立ちあがります。そんな積極的な足立
さんをいつも応援しています。
足立さんは絵を描いている時何が楽しいのかなと傍でじっと見ていたことがありました。足立さんはいつ
もパレットの上に色を並べて絵の上で色を混ぜていきます。大きめの筆で絶妙なタイミングで前に載せた
色に次の色を被せながら、その色が混ざる様子を面白そうに不思議そうに眺めながら描いているのを見つ
けました。筆も大きめのが好きで、細かく描くというよりも、ガーッとパネルの上を滑らすように線を描
いていきます。そういう勢いは、例え描いている途中で顔に絵具が飛び散っても、周りに絵具が飛び散っ
ても全然気にせずに集中して描いています。真剣に描いている姿は傍にいて、こちらまで緊張して来ます。
足立さんが使い終わった筆をすぐさま洗って、足立さんが描きやすい湿り気になるよう筆に水を含ませる
準備を職員がする様子などは、巨匠に付いているアシスタント気分です(笑)。
こう書くと勢いだけで描いているように思えますが、描く前には色を選びながら事前にイメージをして描
きはじめているのです。そういう繊細なところと、積極的な足立さんの大胆さが「ゴージャスでシック」
な作風を生み出しているような気がします。
足立さんは絵画の他に織りと粘土彫刻をしているのですが、仕事が変わるとまた足立さんの仕事の向き合
い方が変わります。織りも現在では主要な仕事であり、毎作品パワーアップしていて驚かされます。その
作品に込めている情熱と、淡々と織り続けている足立さんの姿は見ていてかっこいいなと思わせます。最
新作でも、とてもカラフルで春らしいのにウキウキする感じだけでなく、どこかに落ち着いたイメージが
あります。
粘土彫刻も足立さんの独特な世界を表しています。紙粘土を適当な大きさにちぎって、両手の中で揉むよ
うにして形を整えながら平面的な、でも独特の凹凸感を持った不思議な彫刻を生み出します。また、作品
を作り終えた後作品のタイトルを聞くのですが、「えっ、これが〇〇なの!?」とか「う~ん、なるほどね」
という具合にタイトルと形のバランスが絶妙なのです。作品を観る人が、タイトルを見ながら作品の形を
頭の中でイメージするのがとても面白く、足立作品の味になっています。
これからも「ゴージャスでシック」な足立ワールドがどうなっていくのか楽しみです。

スタッフ 大川祐










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「まーがボンボン」









納田裕加 Yuka Nouda

1985 年に川口太陽の家に入所。その間にはクリーニング屋さんで働いたこともあったが、太陽の家に通い
始めて26 年。「前はね~○○さんがね~」と、よく当初の太陽の家の様子を教えてくれるベテランの納田さ
ん。面白いこと、周囲を笑わせることが大好きで、いつもみんなを楽しませてくれる。そんなみんなを驚か
せたいという気持ちが、納田さんの作品にも表れている。
 長い間、続けてきた仕事は織り。縦糸と横糸の重なりという、ある意味単純な表現だが、みんながあまり
使わないような糸を選んだり、さらには糸ではないものを横糸に使ってみたり…。ここ数年では、切れ端の
糸をひとつひとつ繋げて1 本の糸にし、それを横糸として使っている。その糸で織った反物は所々に糸の結
び目が飛び出ていて面白い。納田さん自身も、その織り方に誇りを持っていて、仕事の中で出る切れ端をみ
んなから集めることにも熱心になっている。また、糸の表現としては織りだけでなく、糸の空き芯にぐるぐ
ると糸を巻き付けていくオブジェも作っている。生活するグループホームの自室で夜な夜な制作し、完成す
るとハイテンションで持ってきてみんなに見せてくれる。これもまた、納田さんならではの作品となってい
て、毎回その不思議なオブジェに驚かされる。
 絵画の活動を始めたのは6 年前。他の仲間が絵画でどんどん評価されている姿を見て、「私もやってみた
い!」と始めた。オブジェも同様に、他の仲間の姿を見て始めた活動で、周りの仲間たちに影響を受けて、「私
も!」と。納田さんの創作意欲は途切れることがない。さらには、周りからの影響で始めた活動も、納田さ
んらしさ満載の自分のものにしてしまうのだから、すごい。今回展示されている全紙サイズの作品は、初め
て描いた大きいサイズの作品で、5 か月を経て完成させた。描き始めると、最初にタイトルは決まっていな
いものの、自分の中に全体のイメージがあるのか、ペンをどんどん進めていく。その中には、キャラクター
や動物など、いろいろなものが隠れている。それを、周りの職員や仲間、見学に来られたお客様に見せなが
ら「見て~!ここまで終わったよ~!」とアピール。朝来て帰るまで、黙々と作品に向かっている姿が毎日
あり、完成した時には「終わったーー!!」と声をあげ、みんなから拍手をもらっていた。大きいサイズで
ある上に、とても細かく時間もかかったので、全紙はもうやらないと言うかと思いきや、「ちょっと休憩したら、今度は何を描こうかな~」とやる気満々。さすが、納田さん!!
 休むことなく毎日何かを表現している納田さんだが、入院や手術の経験も多く、数か月に渡り仕事ができ
ないこともあった。口にするのは「早く織りをやりたいなあ…。ここで絵を描けないかなあ…。」ということ。
納田さんにとって表現することは、生活の一部になっている。表現することを、自身が楽しみ、周りも楽し
ませてくれる。「これは、何!?」と思わず聞いてみたくなる納田さんの不思議な世界が、どの作品にも表
れている。

スタッフ 蒲生侑希









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「雑貨」  「マッターホルン」








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「紅葉」




前田貴 Takashi Maeda

勤続20 年を超えた前田さんは様々な仕事を経験してきた。バリ取り、自転車の部品磨き等の下請けや、
古本販売、和紙の制作を経て、2011 年より本格的に絵画を仕事とする。
最初の頃は、クレヨンで画用紙上部の隅に太陽、そして人物や乗り物をカラフルに仕上げていた。それは
それで悪くは無いと思ったが、クレヨンは端から全色使うので何を描いても同じようになる。そして、学
校で教わったのだろうか、作品の表にタイトルや氏名を書いていた。
絵画の仕事に於いては、基本的に何でも好きなものを描いてもらっている。しかし、前田さんを深く知る
につれ、もっと輝ける何かがあるのではないかと思い「絵はこう描くもの」という枠を外すところから、
一緒に模索することにした。
モチーフやフレームの捉え方、綺麗に描くことの意味、色の使い方などを相談しながら取り組むうちに、
分解・構成・再構築する現在のスタイルに辿り着いた。前田さんは“ 何を描くか” から“ どのように描くか”
へ変化した。
作品の抽象化が進むと、制作途中の画面に予期せぬものが現れ「これは○○に見える」と喜びながら、最
終的にどんな仕上がりになるのか前田さん本人にも分からない。
作品タイトルも説明的な長いものからシンプルなものへと変わり、職員やメンバーだけでなく、来客にた
いしても、何を描いているのかクイズのようなやり取りが始まった。
生み出された作品は、自分を見てほしい、分かってほしいと願う前田さんにとって大切なコミュニケーショ
ンツールとなり、皆の楽しみにもなっていった。
モチベーションを更に上げ勢いに乗る前田さんの作品は、全国公募展で入選し、トークイベントへも初参
加。作品が初めて売れた時には涙を流して喜び、家族や友人へ嬉しい報告も出来た。そして、昨年は錚々
たる作家たちと並び、岡本太郎美術館にも展示された。
用意された仕事から、好きなこと・やりたいことを仕事へ。前田さんは沢山の称賛や評価を得た。いつも
笑顔で仕事をし、元気にホームで暮らしている姿を見ると、毎日が充実していてとても幸せそうだ。これ
からもその素晴らしい作品と優しい人柄で、いろいろな人たちを魅了してほしい。

スタッフ 小和田直幸




工房集展「Fundamental Ⅱ」
KOBO SYU Exhibition[Fundamental Ⅱ]

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by mmfa | 2015-05-03 16:30 | 展示情報 | Comments(0)


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