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2012年 06月 08日
「水無月の水」作品紹介―加藤 渉
「水無月の水」、3人目の紹介です。

加藤 渉 Wataru KATO

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四季を通じて美しい竹林の姿でも、最も私が好きなのが雨の降るこの時期の竹林です。
春先に親竹が落とした葉が敷き詰められ、枝には新しい葉をまとっています。
孟宗竹の林ではタケノコも大きくなり、皮が落ち始めます。真竹の林では、ようやくタケノコが
生えてきます。竹林の脇にキヌガサタケという美しいキノコを見つけるのもこの季節です。


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さて、今回出品した形態の竹灯りが誕生したのは、去年のちょうど今頃でした。
以前から使っていた竹という素材と、大川修作氏に教わっているパルプ造形を融合させてみたい、
という思いから誕生しました。
竹という繊維の束と、パルプという繊維のまとまりは元々親和性が高く、パルプの自由さも相まって、可能性の広さを感じています。


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材料には梅雨時に切り出し水に晒した真竹を使いました。通常、竹工芸には9月から11月にかけて
切り出した竹材を使いますが、梅雨時に切った真竹は身が柔らかく、私の作る竹灯りにはうってつけなのです。明かりの火袋には、工房独自の和紙を使いました。細かく筋状に入った影が、細く割かれた竹と融け合っていきます。


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静かに過ごしたい雨の日には部屋の蛍光灯を消し、竹灯りを点けて生活してみませんか。
天気や時間帯などで次第に変化していく太陽光の色を、肌で感じていただくきっかけになれば
幸いです。
(text/加藤 渉)


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竹を切り出し、1年間水につけ、コンロで炙る油抜き、腐食・黴止め、叩き。
・・時間のかかる工程を経て、誠実に作られた灯り。
周囲の物を水の親和力でもって受け止め、会場をひとつの空気で包んでくれています。

by mmfa | 2012-06-08 21:22 | 展示情報


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